ボケをコントロールする

ペンタックスフルフレーム発表記念w

『前ボケと後ボケ』

『前ボケと後ボケ』 K20D FA43mmF1.9 [ F2.4 1/60 ISO400]

K20D FA43mmF1.9 [ F2.4 1/60 ISO400]

コンデジを卒業し、一眼カメラを購入する動機は、おそらくボケを演出したいということが、最も多いのではないだろうか。
ところが、実際に一眼カメラを手に入れたものの、思ったほどボケないとか、なかなか思い通りに行っていない人もいるのではないかと思う。
ボケの原理はさておいて、どのようにすれば綺麗なボケを得ることができるのだろうか。

なお、これを理解すればコンデジやスマホでもそれなりにボケを生むことができる。
 

『コンデジでもボケる』

『コンデジでもボケる』 C2000Z - [19.1mm F2.8 1/40 ISO400]

C2000Z – [19.1mm F2.8 1/40 ISO400]

ボケの大きさは次の要素で決まる。
1.レンズの実焦点距離(35mm換算ではない)
2.カメラと被写体、カメラとぼかしたいモノの距離の比
3.絞り(F)値

巷ではこれに加えてセンサーサイズを要素に挙げる人もいるが、正確さに欠ける。
何故なら、あとで記述するように、これは1または2の要素そのものであるからである。
 

『長距離砲』

『長距離砲』 K-5IIs SIGMA 170-500mm [500mm F8 1/125 ISO3200]

K-5IIs SIGMA 170-500mm [500mm F8 1/125 ISO3200]

1.レンズの実焦点距離

レンズの実焦点距離が長いほどボケは大きくなる。
実焦点距離が同じならボケの大きさも同じである。
これはセンサーが大きかろうが小さかろうが関係ない。

ところが、実焦点距離が同じならセンサーサイズにより、その「画角」が変わるのである。
例えば50mmのレンズを使用した場合、APS-Cサイズのセンサーではフルフレームで75mmのレンズを使ったのと同じ範囲しか写せない。
従って、APS-Cサイズのセンサーでフルフレーム50mmの画角を得ようとしたら、33mmのレンズを使うことになり、実焦点距離が短くなってしまうために、ボケが小さくなるのである。

そのため、センサーが大きいほどボケるというのは、実運用上の簡易説明としては誤りではないが、原理としては十分な説明になっていないのである。
(原理を理解していないと応用ができない)
つまり、「同じ画角ならば、センサーサイズが大きい方がボケが大きくなる」というのが正しい説明である。

フルフレームで使用する50mmのレンズと、35mm換算50mm相当となるAPS-Cのレンズは同じなのは単に画角だけであり、根本的に異なるものである。
 

『寄る』

『寄る』 K-5IIs DFA100mmF2.8WR Macro [ F11 1/30 ISO3200]

K-5IIs DFA100mmF2.8WR Macro [ F11 1/30 ISO3200]

2.カメラと被写体、カメラとぼかしたいモノの距離の比

単純に書くと、被写体(ピントを合わせたいもの)にできるだけ近づき、ぼかしたいものを被写体からできるだけ遠ざける。
これだけである。

同じ実焦点距離のレンズを使う場合、センサーサイズが大きい方が画角が広いことで、被写体の大きさを同じにするために、より被写体に近づかなければならず、その結果ボケが大きくなるのである。
つまり、センサーが大きいからボケが大きくなるのではなく、結果として被写体に近づくためにボケが大きくなるのである。

ちなみにこの写真は、次に説明する絞りを、説明に反して絞っているが、距離の比が大きすぎて、ボケ過ぎるのを避けるため、あえて絞っているのである。
(が、それでもボケ過ぎた)
 

『絞り開放』

『絞り開放』 K-5IIs FA31mmF1.8 [ F1.8 1/90 ISO160]

K-5IIs FA31mmF1.8 [ F1.8 1/90 ISO160]

3.絞り(F)値

絞りをできるだけ開ける(F値を小さくする)とボケは大きくなる。
フォーカス機能を持っていないレンズ付きフィルムが何処にでもピントが合っているように見え、目を細めるとものが見えやすくなるのと逆の原理である。
絞りを絞ると、ピントが合っていない位置もピントが合っているように見えるため、逆に絞りを開けると、ピントが合っていない位置はよりボケるのである。

31mmはフルフレームでは広角レンズであり、1に反するが、2と3を組み合わせると、広角レンズでもボケるという例である。
 

『標準レンズでの開放』

『標準レンズでの開放』 K20D FA43mmF1.9 [ F1.9 1/60 ISO400]

K20D FA43mmF1.9 [ F1.9 1/60 ISO400]

ここまでが、光学現象に基づく理論的なぼかし方である。
が、例えば同じ焦点距離でもボケ感が薄いレンズに出会ったことはないだろうか。
ここからは感覚的なボケの説明である。

そもそもボケとは何か。
焦点が合っていないことにより、被写体の輪郭があいまいになっている状態である。
ボケの大きさは先の3つの要素で決まるが、もしピントが合っていないのに、輪郭があいまいになっていなかったらどうなるか?
それはボケ感が薄いと感じてしまうのである。

先ほどまでの説明がボケの「量」であれば、これはボケの「質」である。
 

『中望遠開放』

『中望遠開放』 K-5IIs TAMRON 90mmF2.8(272E) [ F2.8 1/60 ISO3200]

K-5IIs TAMRON 90mmF2.8(272E) [ F2.8 1/60 ISO3200]

言葉では説明できないので、以下のリンク先を参照してほしい。
これはボケではなくレンズの収差の説明であるが、合わせてボケの形状イメージが載っている。
素人レンズ教室-その4
 

『良質のボケ』

『良質のボケ』 K-5IIs FA31mmF1.8 [ F2.8 1/125 ISO1600]

K-5IIs FA31mmF1.8 [ F2.8 1/125 ISO1600]

これを見ると、一口にボケと言ってもその状態はさまざまであることが分かる。
ボケの中に、このように輪郭や芯が強く出てしまうと、ボケの大きさが同じでもボケ感の薄いボケになってしまうということである。
一般的に収差を抑える(解像度を優先する)と、光の進む方向は複雑になり、結果として質の悪いボケとなってしまうのである。

FA Limitedが収差をあえて残して人の感覚で美しいと感じる描写を得られるように設計されているのはこういう理由である。
そしてその通り、焦点距離の近い他のレンズに比べてボケが滑らかで美しい描写を得ているのである。
それでいて解像度も十分に確保しているのが素晴らしい。(F2.8まで絞ると女性に嫌がられるほど肌の状態まではっきりわかる)
 

『マクロ』

『マクロ』 K-5IIs TAMRON 90mmF2.8(272E) [ F2.8 1/250 ISO160]

K-5IIs TAMRON 90mmF2.8(272E) [ F2.8 1/250 ISO160]

まとめ

綺麗なボケを作るためには、
1.実焦点距離の長い、なめらかなボケ味を持つレンズを使用し
2.被写体にできるだけ近づき
3.ぼかしたいものと被写体の距離を離し
4.絞りを開ける(F値を小さくする)
ということとなる。

マクロ撮影ですごくボケる(ピントがシビア)のは、2の要素であることが分かる。

全部やると多分ボケ過ぎるので、他の要素で調整すると良い。
必要な要素をきちんと押さえておくと、調整できない要素は他でカバーできるのである。
 

『前ボケと後ボケ(平面)』

『前ボケと後ボケ(平面)』 K-5IIs SIGMA 170-500mm [500mm F6.7 1/750 ISO3200]

K-5IIs SIGMA 170-500mm [500mm F6.7 1/750 ISO3200]

フルフレームで使用するFA77mmF1.8 Limitedが、焦点距離と開放F値とボケの質を考えた時に、いかに優秀なポートレートレンズであるか、ということが良く分かると思う。
(APS-Cではポートレート用途としてはやや長い(^^;)

記事本文が徒然なので今日の戯言は休止しますw

 

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ボケをコントロールする」への14件のフィードバック

  1. いい解説です(笑)
    何となくはわかっているものの、こんな風に解説なんてとてもできません。
    え!?そうなの!?というのも、少しありました^^;

    • どこでしょうか?w
      理論と実践両面で整合性が取れていることを書いたつもりですが、どっか怪しいところありましたか?(^^;

      • ああ、やっぱり誤解させてしまいましたか・・・
        え!?そうなの!?というのは、
        単に私が知らなかっただけのことです。
        何となくわかっているつもりだけど、知らないことが少しありました。と書くべきでしたね・・・orz
        ちょっと言葉足らずかなぁと心配しておりました^^;
        解説は、私が見る限り完璧です(笑)

        • ウソを指摘されたとは思いませんでしたが、一応解説記事なので、疑わしきは裏付けを強化するか、もしくは表記を削除するべきかということでした(^^;

          特にセンサーサイズのくだりは気を付けたつもりです(^^;

          フルフレーム発表記念でこれが覆されると何の記念か分からなくなるのでw

  2. さらっと一回読んだだけでは、よく理解できなかったです(笑)
    もう一回じっくり頭で整理しながら読んでみます!

    出来れば、次回お会いした時に時間があればこのブログ写真を見ながら説明お聞きしたいです(≧∇≦)

    • 細かい中身はさておいて、できるだけ望遠を使って、絞りは開放で、できるだけ被写体に近づけば、背景は大きくボケますよ。

      お使いのオリンパスはフォーサーズ規格ですので、望遠に有利なカメラです。
      そのためか、300mmのレンズを、600mm(相当)と謳っているのを、昔はよく見かけました。
      記事にある通り、600mmのレンズと600mm相当のレンズは別物ですので、これを混同しないようにお気を付け下さい。

      少々乱暴な説明をすると、同じ画角のレンズで比較すると、フォーサーズではフルフレームに比べて必要な焦点距離が半分なので、ボケも半分です。

      もちろん、次回お会いした時に、詳しくお教えしますよ。

  3. おはようございます(^^
    上手く話しの流れを掴みながら、時事ネタや仲間内馬鹿話しなどをそれとなくぶち込んでみたり、考えついたボケを入れるために、その方向にネタを振ってみたり、ツッコミを期待しなくても、ボケだけでも話しが生きる事を証明したいと日夜願っております。
    同じボケでも、話しの輪郭や論旨がうやむやで理解出来ず、話しだけが長くて、話題がボケてる人も見ますが、ボケはボケでもこのボケはつまんないです。
    っと、私なりにボケを解説してみましたw

    • ボケが美しいのはちゃんとピントの合っているところがあるからです。
      したがって、話の輪郭や論旨がうやむやなボケはただのOut of focusでありますw

  4. 詳細な解説で読みごたえは十分と思いますが、初心者には難しく感じるかも
    しれませんね。
    記事の内容としては、一眼レフを買ってコンデジとは一味違うボケを味わったけど、さらにボケの量や質をコントロールしたいレベルの人向けでしょうか。

    FA43でのテーブルフォト、いいですね。
    FA31だと器の輪郭がひずむのが難点と思っていますので、
    FA43だといいんじゃないかと思っているところです。
    FA43はどれくらい寄れるんでしたっけ?

    • そうですね(^^;
      センサーサイズとボケの誤解をなくすために意図して掘り下げている部分がありますからね(^^;

      でも、結論はシンプルです。
      ・長いレンズ
      ・寄る
      ・開放

      難しいと思った人は、まとめだけ読んでくれればいいですw
      と、jerryさんへのコメントを借りて言ってみるw

      ちなみにFA43もあまり寄れません(^^;
      倍率はFA77とあまり変わらなかったんじゃないかな…
      最短撮影距離0.45mで最大倍率が0.12です(^^;

      FA77が0.14倍なので、それより寄れないようですw
      FA31が0.16倍なので、なるほど、食べ物撮りには三姉妹で一番向いているようです。

  5. こんにちは
    今回の記事読み応えあります。
    ボケって、初心者が直面する問題ですよね。
    行き着く先に、単焦点レンズが待ってますけど
    ズームレンズでは味わえないものが、そこにありますね。
    お書きのように、実焦点距離の長いレンズを使うと、実感し易いのかも知れません。
    私の場合、M135やA200でボケのコントロール修行しましたから・・・

    • レンズ構成が少ない方が、光路がシンプルな分ボケもまとめやすいですよね。
      しかもズームだと焦点距離によってボケ味も変わってしまうし(^^;

      単焦点=良いとは一概には言えないですけど、やはり突き詰めれば単焦点に行くでしょうね。

  6. 「ボケが欲しければフルサイズを買え」
    某掲示板でこのコメントが書かれる度に出て行こうかと激しく悩みます(笑)
    このような記事は秘密基地でも定期的に書いていましたが、最近はあまり触れていませんね。
    親指 AFの事とかも定期的に書いた方がいいんだろうなぁ~(笑)

    • シチュエーションとして、確かにほとんどの場面でボケは大きくなるでしょうけど、手持ちのレンズラインナップを変えないとすると、最短撮影距離ではフルフレームもAPS-Cも変わらないわけだし、ボディを変えるだけで済むわけではないということに誰も言及していませんね(^^;

      親指AFは現在記事推敲中です。
      よさこい撮影での親指AFは、歩留まり向上に間違いなく貢献しておりました。

      必要ない人は必要ないかもしれないのですが、わざわざそれにケチをつけるやつは、単に適応能力が低いだけにしか見えません(^^;
      単に「自分には必要ない」で済むものに、わざわざケチをつける理由は他にありませんからw

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