現地ツアーの出発は10:30。
申し込みの締め切りが何時か分からないため、早めに行って申し込むことを考えていた。
しかし、ホテル到着が早朝2:00でそれから寝たのは2:30過ぎ。
とりあえず9時くらいまでに駅到着を想定していたのだが、6時半に部屋の電話が鳴る。
「チェックインは2時か」「そうだ」
「チェックアウトは3日か」「そうだ」
「今日のガイドは必要か」「いらん」
チェックインを2時と知って、こやつは何故この時間に電話をかけてくるのか(- -;
ホテルに置いていく荷物を仕分けした後、出発前にシャワーを浴びることにし、蛇口をひねる。
…ぬるい、いや、これはぬるいお湯ではない。ぬるい水だ。いくら待ってもこれ以上温かくならない。
インドと言えど、ここは北部でしかも内陸であり、朝晩は意外と冷える。
屋内で服を着ていれば問題ないが、裸で水を浴びれば間違いなく寒いに決まっている。
しかたがないので頭や足など、パーツだけ洗っておしまいにした。
帰る頃には多少におうかもしれないが、飛行機で隣に乗った人には耐えてもらおう。
どうせその次に会うことはない。
8:30頃にホテルを出て駅に向かうことにする。
ホテルを出るもリキシャなし。
タクシーが1台やってきたので駅まで行きたいことを伝え、値段を交渉する。
300ルピー、ちょっと高いと思っていたら1台のリキシャがやってきたのでこちらにも交渉。
200ルピーは若干高いと思ったが、タクシーが300なら200でもやむをえないとリキシャに乗ることに。
駅に向かう途中、リキシャのドライバーが、「自分には外国の友達がたくさんいる。日本人もいる」と言って、小さいが厚いノートを見せてくれた。
彼と、彼に関わる旅行者に向けた旅行客のメッセージだ。確かに日本語のメッセージもいくつかある。
英語のメッセージはかなり読み飛ばしたが、概ね、「このドライバーは、信用できるいいドライバーだ」ということが読み取れる内容であった。
当初の予定通りバスツアーでも良かったのだけど、単独行動のほうが時間に融通も利くし、食事とか、行き先も自由なので、ちょっと交渉してみた。
「もしこのリキシャを1日使ったらいくら?市内だけでなくファテープル・スィークリーにも行きたい」
「駐車場代や通行料別で800ルピー、それら込みなら1500ルピー」
「おっけー、じゃ、それでお願いしたい」
とあっさり交渉成立。というか、交渉の必要も無かった。
ここでふっかけてこないってことは、さっきのノートの通り信用してもいいかもしれない。
彼の名前はTorry。
彼は移動だけで入場・ガイドはしないため、合流のために連絡が取れるよう、名刺をもらった。
彼の会社ではリキシャだけでなくタクシーも手配できるらしい。
さっそくファテープル・スィークリーに向かうことにする。
寒い。ある程度覚悟はしていたが、リキシャは風が通り抜ける上に、1月の北部、しかも朝。
霧もまだ晴れきっていない。
まさかインドで白い息を吐きながら、凍えた手でLINEをぽちぽちやることになるとは思ってもみなかった。
こればっかりはバスツアーに未練が無かったといえばうそになるだろう。
The World Heritage – Fatehpur Sikri
1時間半かけてファテープル・スィークリーの駐車場に到着。
ここから片道10ルピーのシャトルバスに乗って現地まで行くことになるらしい。
バス乗り場に向かうところで、一人の男が近づいてきて、帰りに自分の店に寄ってくれ、と。
買わないよ、と言いつつ一応、見るだけなら、と伝えてバス乗り場へ。
その男が去ったところで、Torryが言う「彼の言うことは信用しない方がいい。店に置いているものも質の悪いニセモノだ。帰りは同じ道は通らずに駐車場まで戻ってくるといい」
これはちょっと驚いた。以前の旅行ではガイドをつけていてもお土産売りには不干渉だったからだ。
国の事情を考えれば、こういう商売のやり方を、応援はせずとも批判はしたくないのだろうと思っていた。
でも、彼が言うには「人をだますのは良くない。お金は正しく稼ぐべきだ」とのこと。
最後まで気を抜くつもりはないが、Torry、ホントにいい人かもしれない。
日本人は多分あまり知らないであろう、アグラの世界遺産ファテープル・スィークリー
水不足のため、わずか14年で放棄された都だ。
無料で入ることができるイスラム教のモスクエリアと、入場料が必要な宮廷エリアがある。
宮廷エリアから回るためにチケットオフィスを探していたら一人の男がやってきた。
「ガイドはいらないか」「いらん」
だが、「ここは広いので、ガイド無しではかなり時間がかかる。自分は政府公認のガイドなので、料金はそこの看板の通りだ」という。
ガイドが不要と言うより、この後アグラ城とタージマハルにも行かねばならず、写真に集中して短時間で済ませたかったのだ。
説明は要らないのだが、無駄に時間を費やすのは避けたいと思い、値段をしつこく確認した上でガイドをお願いすることにした。
しかし、これが第三の過ち。
結果から言うと、確かに広いが、ガイドが無くても時間は無駄にならなかったと思う。
まぁ、成り立ちとか各建物の意味だとか知ることができたのでよしとしよう。
だが、問題は次のモスクエリアだった。
モスクエリアに向かうところで別の男がやってきて、ガイドが言うには、
「彼は自分の兄弟だ。こいつは日本語も少し話せて、ここから先はこいつの方が詳しいので、彼についていけ。ガイド料は彼に払ってくれればいい」とのこと。
ちょっと不審には思ったが、料金を再確認して問題なさそうだったので、次のガイドについていくことに。
ガイドは日本語でたしかに丁寧だった。
だが、お土産を買っていってくれ、と、あるお土産売りのところへ。
高いから要らないといい続けていると、「インドには貧しい人が多い。これはチャリティだと思って」とか、「これは手作りで一つ作るのに8日もかかっている」とかから始まって、しまいにはガイドとお土産売りの間で三文芝居が始まった。
自分 「しゃーない、それじゃ小さい方一つ1200ね」
ガイド 「もう一つのこれはいいものだ、だからもう一つ買ってくれ」
土産屋 「この(大きいのと合わせて)二つなら2500で」
ガイド 「ダメだ、彼は自分の友達だ。だから+1000の2200にしろ」
土産屋 「…分かった」
ナニこの白々しい掛け合い。
いやいや、君らつるんでるの分かってるからね?
約半額でも十分に儲けがあることは大体想像ついてるからね?
かくして、またしてもこんなところで時間を浪費してしまったのである。
The World Heritage – Agra Fort
Torryと合流してアグラ市内へ戻る。
「タージマハルは何時がベストタイムか」「この時期なら4時半ぐらいなので、先にアグラ城へ行って、時間があれば食事をとって、それからタージマハルに行くのが良い」
位置的にもアグラ城のほうが手前なので先にアグラ城へ行くことにした。
道も良く知ってるし、案内も親切で丁寧だし、いいドライバーだ。
アグラ城はめっちゃ混んでいた。
だからかもしれないが、ガイドの売り込みはなかった。
Torryには1時間半と伝えていたがガイド無しのおかげで1時間ちょっとで出てきたw
その後、地球の歩き方でチェックしていた二つのレストランを知っているかTorryに聞くと、その一つを知っているとのことだったのでJony’s Placeへ向かうことに。
二つのレストランはそれぞれ、牛丼と牛焼肉定食が食べられるとのことでチェックしていた店だった。
Jonyは牛丼の方だったが、立ち寄った旅行客が作ったと思われる日本語のメニューがあり、これがオススメだと指したのは、上から紙を貼って訂正している「Mutton Steak + Rice」。
すぐ下に、日本語で「インドで牛肉が食える!」と書いてあった。
「これ、Muttonって書いてるけどBeefの間違いか?」
「(口に人差し指を当てて)Very Secretだ。インドで牛肉を出すのはあまり良くない」
なるほど、違法ではないにしろ風当たりはきついのだろう。
このエリアはイスラムの人たちが多いらしく、それでこういうこともできるのだと理解した。
Steakという響きにわくわくしながら待っていると、出てきたのは、「牛野菜炒めが乗った皿ご飯」だった。
丼ではないが、地球の歩き方の情報は正しかった。これはSteakでは断じてない。牛丼だ。
ご飯がインド米でパラパラであったが、味はまずまずだった。
牛肉も、特別うまいと言うほどではないものの、確かに牛肉であった。
店を出るとき、「ラーメンがオススメだ。次回はこれを食べるといい」
さっきあんたSteakがオススメって言ったじゃん!Σ( ̄□ ̄υ)
まぁ、牛肉目当てで来たからいいんだけどさ…
でももう、ここに来るチャンスは多分無いと思うよ…(^^;
Joney’s Place
Near South Gate, Miyan Nazir Rd, Kutta Park, Tajganj, Agra
The World Heritage – Taj Mahal
そしていよいよタージマハルへ。
チケットを購入し、やたら遠い東門へ。
荷物検査があるのは知っていた。スナック菓子など、ゴミやカスが出るものが持ち込み禁止とも知っていた。
だが、ゴリラポッドとPCが引っかかったorz
「ここでは預かれない。チケットオフィスにあるクロークに預けて来い」
って、かなり距離ありますけどー!?Σ( ̄□|||υ)
PCとゴリラポッドを持って途方にくれていると、「クロークサービスあるよ」との声が。
天の助けとついて行くと普通のお土産屋じゃねーか。しかもただで預かると言う。
ただなんてウソだ。
絶対なんか買えって言って来るだろ。
しかもクロークじゃない。そこはただのショーケースだ。
「何も買わない。その代わり100ルピーで預かってくれ」「せめて200で」「しょうがない。分かった200で」
背に腹は代えられない。ここで正規のクロークまで戻ったらかなりのタイムロスだ。
Torryの言うベストタイムも逃してしまう。
何とか入場した。
タージマハルはでかかった。あれが全て大理石だというのだから、そりゃー国も傾くってものだ。
写真ももちろん撮ったが、正直面白くない。
美しいアングルが限られていて、誰がとっても似たようなものしか撮れないからだ。
そして、あの大きさとすごさは写真では伝わらない。
写真ですごさを伝えられないと完全に断念したのはグランドキャニオンに続いて二つ目だ。
せめて、おなじみのアングルぐらいはびしっと真正面から撮ろうと思った。
行きでは人が多すぎて断念。
帰りには閉門時間が迫っていたため、人が少し少なくなっていたので、人がはけるのを待っていた。
だが、中韓台辺りの人が、陣取ってなかなかどいてくれない。
セルフィー棒につけたスマホとNikonらしいデジイチで何枚も何枚もしつこく撮る。
デジイチのときは、一段低いところにいたので、上から撮れると正面に立ったのだが、おっさんのセルフィー棒が、構図に入り込む。
使ってないときは下げろや凸(-_-#)
そこからやや待ってようやく真正面を押さえることができた。
預けたPCとゴリラポッドはきちんと返してもらえた。
大理石のマグネットが3つで1000ルピーだというので、「3つで500ルピー、それに預かり賃で200ルピー」を提示して交渉成立。
きっと工賃を含む原価はひとつ50ルピーぐらいだろう^^;
その後Torryと合流して帰路に着いた。
ホテルのすぐそばで美味しいチャイをご馳走したいと言う。
折角の申し出なのと、ホテルのすぐそばと言うことでお誘いに乗ることにした。
日が暮れて気温が下がり始めたアグラで飲むマサラジンジャーティーはとても美味しかった。
初日と二日目でインド人不信になりそうだったが、Torryのおかげでそうならずに済んだ。
そして彼のおかげで旅が楽しめたと、心から思う。
旅の途中、折々にTorryに感謝を伝えると、「あなたが楽しむことが、自分の楽しみだ」という。
言葉だけじゃなく、実際の行動があるので、とても説得力があった。
その後、ホテルでTorryと別れたが、彼の案内にはとても満足したので、1500のところ、500を上乗せして払うことにした。
Torryは一度これを辞退した。これは本当に驚いた。
まっとうなドライバーであっても、こちらから出そうとするものまで辞退しようとするとは思わなかった。
でも、もう一度「あなたはとてもいいドライバーなので受け取って欲しい」と伝えて受け取ってもらった。
彼のようなドライバーがもっと増えることを願って。
インド編は読み応えありますねぇ 笑いながら読める楽しいエッセイです。
常識的な商売をしている人がいてよかったですね。負のイメージしか持ち帰らないというのは悲しすぎます(笑)
1回の記事でいつもの数倍のボリュームになっていますw
旅から帰ってきて思い起こすと、いつもの写真記事だけではあまりに惜しいと、急遽執筆いたしましたw
長いのでどうしようかと思ったのですが、分割していつまでも続けるとだらだらするし、やはりキリのいい1日で、と思ったらこんなボリュームになりました(^^;
楽しんでいただければ幸いです。
自衛は大切ですが、折角の旅ですから、楽しいものであるのが一番です。
今回は色々ありましたが、この2日目は自分にとってラッキーであったと思います。
こんばんは(^^
ナイスTorryと命名したいです。
もういっその事、助さん格さんの如く、あるいは関羽張飛の如くにTorryさんを従えていれば、何と心強い事か。なんであれば、タージマハルをTorryの家にしても良いと思いますw
それにしても、こんなに人が集まるんですね。
焼きソバとかタコ焼き売ったら、儲かるかなぁ。
一応、Torryの携帯番号をメモリーしときました。
本当にナイスですw
アグラに訪れる機会があれば、彼に連絡を取ると良いと思います。
まっとうな人がきちんと設けて欲しいと思うのは日本人だからでしょうかw
もっともっと彼を使ってあげて欲しいと思います。
ちなみに今FB友達ですw
今回は1/1が金曜日で、タージマハルは金曜日が休みです。
そのため連休初日の1日に来たかった人たちが、2日に集中して訪れたため、特に混んでいたようです。
時間がもう少し早いとすいているようなのですが、今度は霧の影響でタージマハルが埋もれてしまいます。
アグラ城は多少霧がかかってもむしろいい雰囲気を演出できるので、アグラ城→タージマハル→ファテープルスィークリーと回るといいかもしれませんね。
移動は少々行ったり来たりになりますが(^^;
ちなみにタージマハルの敷地内での飲食は、水のみ持ち込み可です。
入場ゲート付近で商売をすることと、焼きそばの豚肉も、たこ焼きのタコも入れないことをオススメしますw
無神経にかけてくる電話や、ぬるいお湯はありがちですが
ぬるいお水だけは 勘弁してくれー!ですよね。
半ギレ、本ギレ、脱力… の繰り返しでしょうが
そんな中でのTorryさんの出現は、砂漠の中のオアシス!
やはり何事もプラマイゼロなのかもしれません。。。
どうしても買わされてしまったお土産達があれば
またいつかご紹介下さい〜。(笑)
ハノイでもお湯が出ないとか、途中で水になったと言う話しはたまに聞きますが、それは今回の半額くらいのホテルクラスの話ですから、2泊もするのにお湯無しはきつかったです(^^;
とにかくうんざりすることが多かったですw
まぁ、これはこうした旅行でなくても、日常でリキシャを相手にしているといつものことではあるのですが(^^;
ちなみに、ブログ記事を起こしてようやくプラスマイナス0ですw
何事もネタにしてやるぞという思いがないと、マイナスの方が多いかもしれません(^^;
お土産は…考えておきますw
こんにちは
今回の旅行記も、とても面白いです。
インドは貧困率が高いので、観光客へのタカリは半端ないなぁ~
その中でも、まっとうなビジネスをしている方もいて、安堵しています。
商売の基本は、信用ですよね。
Torryさんのように、信用でお金を得るほうが、リターンも大きいのにと思いました。
日本人の常識では信用第一ですよね。
多分それは日本という国が長い間安定していて、長期的に価値のある信用が有利に働いてきた結果なのでしょうね。
でも、厳しい自然環境や他国からの侵略など、今日生きることが重要で、先が不透明な環境にあれば、半年後の収穫よりも目の前のおにぎりなのでしょう。
いずれの価値観も、環境変化の早い現代では、なかなか切り替えが難しいのだと思います^^;