色を出す

『空の色』

K5228365-20140803-15 mm-1-350 秒 (f - 8.0)-3.jpg

K-5Ⅱs DA15mmF4 [15mm F8 1/350 ISO160 ±0EV]

天候に恵まれず、意図した色が出ないことは良くあります。
これを、RAWデータからの現像を経由すると、かなりカバーすることができます。

JPEGからもある程度はカバーできますが、カバーできる範囲は圧倒的にRAWの方が広いです。
JPEGをレタッチなど極端にいじると、白とび、黒つぶれ、トーンジャンプなどで簡単に破たんします。
また、RAW現像はオリジナルデータには一切手を加えません。

オリジナルのデータと調整情報は独立して保持しており、
それを現像(JPEG等、一般に見える形式に出力すること)する際に反映させるものです。
一方レタッチは元の画像に変更を加えるため、もとに戻すことができません。

また、JPEGデータの場合、不可逆圧縮のため、加工・保存を繰り返すたびに劣化します。
言ってみれば、RAW現像は素材+レシピであり、JPEGはそれによって調理を済ませたものです。

『標準露出/Lr自動調整』

K5228365_compare.jpg
Lrとは、adobe Lightroomという現像ソフトのことです。
調整項目が細かく多彩で若干とっつきにくいですが、一度慣れると何でもできるのでとても快適です。

ノイズリダクションやシャープネスの際のピクセルの処理がとても丁寧で、
さらに同じadobeのPhotoshopとの親和性が高いため、後処理も非常に高度で効果的な仕上げが可能です。

左がLrの初期パラメータでの現像です。(初期値も若干カスタマイズしています)
右がLrによる自動調整後です。
空も透明度が低く、明暗差が激しいシーンなので、まぁ、こうなりますわなw

ここから露出を落とし、ハイライト、シャドウを調整すると、扉のように空の青がよみがえります。
岩の表情もオリジナルより出し、かつ日の当らない側であることを表すために、
暗部の陰影には気をつけます。

当然のことながら、オリジナルで明るすぎると、空の色が不自然になるのと、
太陽周辺が飽和して境界線が現れます。
オリジナルで暗すぎると暗部のトーンがジャンプするのと、
ノイズが浮き上がってきて大変なことになります。

本当は、ブラケットで撮影して、ベストな露出から調整するのが良いですが、このときは単写です。
全体測光で明部、暗部の構図的なバランスが取れていれば、標準露出で大体大丈夫です。

『Lr自動調整/調整後』

K5228341_compare.jpg
これも同じです。
ちなみにLrは自動調整をかけると、若干明るめに露出を調整するので、
標準設定では、自動調整の影響を受けないトーンカーブで、中間トーンをいくらか落としています。

『+3.0/-1.5』

K5229110-13_compare.jpg
こちらはブラケットから起こしたサンプルです。
HDR撮影のために、+3.0/+1.5/0/-1.5/-3.0の5枚撮影です。

露出が適切でないとこのようになります。
+3.0では飛んだ色をムリに落としているため、空の色が不自然なシアンとなり、
太陽周辺の飽和した部分はどうやっても回復できません。
ついでに光芒の中心が小さい、右の方が綺麗にまとまります。

『-1.5/-3.0』

K5229113-14_compare.jpg
次に暗い方との比較です。
同じくらいの明るさになるように調整すると、暗部のノイズがひどく、
ムリにノイズを取り除くと、ディテールを失わせることになります。

当然ですが、ISOが上がるほどこれは顕著になります。
明暗差の大きいところではブラケットで撮影し、ノイズが許容できるうち、
最も暗いものをベースにすると明部の色がきちんと残っているため、
色を出しやすいです。

『単写(Lr自動調整/調整後)/HDR(単純合成/+Adjust)』

K522915_compare.jpg
最後に究極のいじり倒しですw
左上がLr自動調整後で、右上がそこから露出、ハイライト、シャドウ、を調整したものです。

上の2枚は単写です。
下の2枚はHDRです。
左下がLrの自動調整をせず、撮れたままLrの初期設定だけが適用されたものを5枚HDR合成したものです。
右下がそこにレベル補正を加えたうえで、AdjustというPhoto Shopのプラグインで、
2種類のフィルターをかけたものを重ね合わせたものです。

なので、これはRAW現像+レタッチですが、データの引き渡しは16bitで行い、
できるだけデータの損失を抑えています。(JPEGは8bit)

Adjustは加工した感が非常に出ますが、ごまかしのフィルターではなく、
表現の選択肢として活用するものですので、むしろ自分はドラマチックに、
絵画的になるのが面白いと思っています。

2枚のフィルターを重ねるのは、トーン系とディテール系の2枚です。
それぞれ何種類かありますので、場面に応じて選ぶのは違いますが。

RAWからの現像で手を加えることを、邪道だと言う人もいます。

自分のイメージを表現するために、フィルムを変えるということは当たり前の行為であります。
ありのままを写すということは、言ってみれば誰が撮っても同じということであり、
自分のイメージを表現するために変化をさせる、その行為は邪道でもなんでもありません。

フィルムの時代には、フィルムによりイメージが左右され、
撮った後で調整をすることは困難でした。
そのため、事前にJPEGイメージを決め、それで思った通りのイメージに仕上げることこそ正道であり、
後からいじることが邪道だと言う人もいます。

たしかに技術と感性をそうやって磨いていくことは大切なことでありますが、
もともとは後からできなかっただけの話であり、無駄な縛りです。

事実、フィルムの時代だって露光時間調整、トリミング、覆い焼きなど、事後調整は当たり前に行われています。
フィルムの時はできなかったことですが、デジタル時代になり、
JPEGの仕上げ設定を1枚ごとにいじることができます。

事前に意図したイメージになるように設定をいじることは、仕上げイメージを養うために重要です。
しかし、設定変更の間にシャッターチャンスを逃すことがあれば、それは愚かな行為です。

RAW現像が良いとか悪いとかということでなく、トリミングや、露出調整で簡単に補正できることに頼り、
あらかじめ仕上げイメージを持たないまま安易にシャッターを切り、
撮影を手抜きすることが問題であるということが本質であるにも関わらず、
その問題の本質を見失い、手法にこだわって批判をしているようにも思います。

RAW撮影と言えど、何も考えずに撮ったどんなものをもカバーできるわけではありません。
そして、オリジナルのデータの質が高いほど現像後の質が高いことも言うまでもありません。
RAW現像は失敗をカバーすることもできますが、それを目的としてはいけません。
あくまで自身のイメージを正確に反映し、表現力の幅を広げるための手段とするべきであり、
決してシャッターを切る一瞬をおろそかにしてはいけません。

こう考えれば、RAW現像が邪道かどうかというのは意味のない議論です。
まして我々はアマチュアであり、趣味です。
原形をとどめないほど変更を加えたものは、そう公言すれば良いだけのことです。

今日の戯言
良薬口に苦しという

しかし、苦いからと言って良い薬とは限らない。
人間の味覚は伊達ではなく、人間に必要となる栄養素を好み、
害になるものを排するための識別の役割がある。

甘いものはエネルギーとなる炭水化物。
塩辛いものはミネラル。
すっぱいものは腐敗を感知し、苦いものは毒を識別するのである。

つまり苦いものにはそもそも毒性物質であることが多いということである
薬は美味しいかどうかで服用するものではないため、確かに不味いものである。
しかし、だからと言って不味い=良薬でない事は明らかである。
狙った症状に効果的に働き、副作用なく、かつ美味しい薬があればそれこそが究極の良薬である。

英雄色を好むという

しかし、エロけりゃ偉大な人物になれるわけではない。
いや、むしろエロいことの言い訳として、この言葉を使っている者に、
英雄の資質などないと思うのである。

英雄を目指すなら、最後まで隠し通す究極のムッツリか、
一切隠すことも言い訳することもなく、これがオレだとLet it goを貫き通すか
いずれかの道を歩むべきである。

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色を出す」への9件のフィードバック

  1. 素晴らしい!
    RAW撮影・現像へ誘うお手本の様な記事ですね!
    某巨大掲示板のガチガチ頭へ読ませてあげたいです。
    RAW邪道発言があったら迷わずここのURLを貼るぜ!(笑)

  2. にーさん
    大手にリンク貼るならもう少し文面見直しますw
    ちょっとぐだぐだになってるところがあるので(^^;
    事前の仕上げ設定でいじるのと、後から現像でいじることに何の差があるのかさっぱりですw
    前工程か後工程かは、見る人には関係のない話です。
    撮るときに、自分の中でイメージを作ることは大切なことです。
    後からいじることを前提に適当にシャッターを切ってはいけません。
    現像否定派は、本来否定すべきはここであり、現像の是非ではないと思うのです。
    前工程にこだわるのは個人の勝手ですが、
    それによって大切な一瞬を逃すことが、どれほど大きな損失か。
    趣味でやってる以上、時間もお金も制約があります。
    リトライなんていつでもだれでもできるわけではないですからね(^^;

  3. おはようございます(^^
    デジタル一眼を買ったのは、急に建築写真を広角で綺麗に撮る
    必要に迫られて慌てて買ったのですが、画像データ=JPEGとしか
    知識が無くて、初めの500枚位をJPEGで撮ってたんです。
    その後にRAWの事を知ったわけですが、そのJPEGで撮った写真は
    今でも使う事があり、その時RAWで撮ってなかった事を、今でも
    悔やんでおりました。。。取り直しがきかないもので(>_<) 某掲示板でも見掛けますが、JPEG撮って出し万歳で RAWから加工するのを否定する意見ですが、これが私には 全く理解できません。 JPEG撮って出し万歳関係の人は、撮った時のそのままだぜ♪的 なトコに真理を求めてるかと思うのですが、それってデジタル データのカメラ内で加工されたデータであり、その作業を後から じっくり丁寧に、時にはドラマチックにw 仕上げるRAW現像と カメラ内でやってるか、後からPCでやってるかの違いだと思うです。 それに何と言ってもRAWでじっくり仕上げた方が 断然仕上げが美しい! ってトコだと思うのですが、撮って出しが良い人はそれを 楽しめば良いでしょうと思います(^^ 過去のRAWファイルも、年々その当時の仕上げよりも綺麗に 仕上げれるようスキルもUPしていくので、RAWファイルは 永久に不滅です!と言い残して死にたいと思いますw

  4. すげ~っす~ デジ一の取扱説明書に盛り込みたいwww うまいな~*\(^o^)/*
    んで、毎度の事ながら戯言にも感動しちゃいしたw
    どーしてんだろ?いつもネタ考えながら過ごしてるのかしら…??

  5. こんにちは
    私も、JPGで撮ることはないですね。
    どうも、メーカーのお仕着せの色が出てくるので好きではありません。
    調整できる幅はあるとしても、色傾向は同じだと思います。
    rawで自分の求める記憶色を極めるほうが、良いと思ってます。
    撮影の時に仕上がりをイメージしながら撮ることは大事なことですよね。
    私は、眼に障害があるので、ファインダーから見えるものが、皆さんと異なっているんですよ。
    見えてない情報をイメージしながら撮っているので、ちょっと感じ方が違うのかも知れません。
    見えてない分、後で弄ることはありますが、弄る前提にはしていませんね。

  6. bluemさん
    私もしばらくはJPEGでした。
    その後、RAW+JPEGで運用していたのですが、サードパーティ製の現像ソフトを手に入れてからは、
    RAWオンリーになりました。
    バンドルソフトでは一括現像ができなかったりするので、これは改善してほしいですね。
    1枚ずつの現像なんて、RAWの楽しみを奪っているだけです(^^;
    現像はダメなのに、何故レタッチは批判を受けないのでしょうね?
    現像否定派には是非Photoshop撲滅運動を展開してもらいたいものですw
    筋の通っていない批判は、大概ダブルスタンダードですw
    RAWのメリットは好みの変化にも対応できるし、
    ソフトや自分の技術向上に伴い、何十年後でもクォリティを高めることができることですね。

  7. 暮らしさん
    偉そうに書いてますが、やってることは大したことないですw
    でも、逆に言うと、たったこれだけでクォリティが格段に上がるということであり、
    RAW現像をしないともったいないと主張する理由でもありますw
    以前にーさんが言っていましたが、優秀な現像ソフトは、優秀なレンズ1本に匹敵する、と。
    しかもそれがあらゆるレンズに対して使用できるのだから、
    これは使わないのはもったいない。
    戯言は、思いつくごとにEvernoteにメモを残して、あとから文章を構成します。
    でもメモし損ねて忘れてしまうことも多々ありますorz
    ボーっとしていて考えることもあるし、あらゆるメディアに触れた際に、
    自然に突っ込んだことをネタにすることもありますw

  8. iMovieさん
    iMovieさんの場合は、また事情が特殊ですね(^^;
    メーカーお仕着せでも自分の気に入った絵が出てくるなら、自分はOKなのですが、
    一方で現像否定派の方は、それじゃあ、出てくる絵でカメラ(センサー)を選んでいるかと言えば、
    ほとんどの場合、AFがどーだ、連写がどーだ、ノイズがどーだと、
    吐き出される絵とは関係の薄いスペックを追及しているわけでしてw
    そこまで言うなら、フィルムを選ぶようにセンサーでカメラ選べよ、
    と言いたくなるわけでありますw
    まぁ、自分の場合は失敗も少なくなく、リカバリ作業も多々あるのですが(^^;
    それでも撮る瞬間にはこう撮りたい、を意識しています。
    意識しています、というよりは、自分は特にスナッパーですので、
    そのイメージがわかない瞬間にはそもそもカメラを構えていないわけでw
    あとは思いつくままに撮っていることが、じっくり構図を練るという行為を
    省略していることにつながっており、現像でリカバリするからいいや、と
    思っているわけではないのですが、詰めの甘さがあることも事実であり、
    そこはきちんと向き合って改善していかねばと思っています。

  9. レンサバ立ち上げおめでとうございます。
    ( ^▽-)∠※☆オメデトォ~
    このテーマも良さそうですね。
    更新楽しみにしております。

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